「展墓」
秋のお彼岸の事を〝展墓〟と言いまして秋の季語にもなっておりますが、この〝展〟という字は、〝かえりみる〟という意味です。つまり、お墓参りをして、先祖を顧みて、今の自分を照らし見てみる、これからの自分の生き方を見てみる、これが展墓という意味です。
この展墓と同じ意味の言葉が、古事記の太安万侶が天武天皇が元明天皇に献上する時に書いた初めての言葉〝稽古照今〟です。〝稽〟というのは学ぶという意味です。昔を学んで今を正す。これは、神社によく掛かっている言葉ですが、「昔を学んで行けば、今自分が何をしたら良いか、しなければならないか、或いは、これからどういう風に生きていけば良いのかわかりますよ」というのが、稽古照今です。稽古照今も展墓も同じことを言っていると思います。
今の天気予報は良く当たります。明日の気温は何度くらいで、どういう風が吹いて、何時頃から雨が降るか、台風の進路等、何故読めるかというと衛星から状況は見れますが進路は見れないので、過去の膨大なデータをコンピューターで予測して、分析した結果台風の進路はどの方向かなど解る。つまり、未来を見ようとしても未来は見えない。過去の分析をしていくと、台風は何処に行くのか予想がつく、それと同じように過去を見ると自分はこれから何処へ行けば良いか見えてくる。私はこれを〝バックトゥザフューチャー〟と呼んでいます。
過去を見れば自分の未来が見えてくる。昔の言葉に〝自分の生命の起源を知れば自分の亡くなった後が分かる〟というのがあります。自分の先祖の入口は両親です、その両親の先の先のずっと先を見ると〝縁〟に行きつく、つまり仏に帰ってくる。我々が亡くなったら〝ここ〟に帰ってくる・・・過去を見ると、自分の今の意思、今後の行くべき道というのが見えてきますよと言う意味です。
天武天皇もお詣りをしながら実は今の状況と今後の事を見ていたのではないかなと思います。