住職のお話

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住職

「~人生の五計~ 後編」

「死」を意識した精神的対策が充実をもたらす


しかし木と人間の違いは、人間は肉体と共に心という精神を持っている生き物なのです。

その生き物が老いていくのです。

 これから老いを迎える人が準備しなければならないものに、金、健康、孤独の三つがあり、それぞれの頭文字を取って三Kと言うそうです。

確かに何をするにも先立つもの、「お金」が必要ですし、またお金があっても、「健康」であればこそであり、またもしもお金と健康に恵まれたとしても、最後は一人で死んでいく「孤独」が待っているのです。

 我々は、お金や健康などの物質的対策と共に精神的対策が必要なのです。

物質的対策はやろうと思えば短期間でできますが、精神的な対策は短期間ではできません。

 若い内から良い書物を読み、良い教えを聞いたりして、心の糧を蓄え、宗教的雰囲気を身につけておく必要があるのです。

そのことが充実して生きることにつながるのです。

 道元禅師とお弟子さんとの問答に、弟子が「この世にはなぜ成功する人としない人がいるのですか」との問いに禅師は「成功する人は努力する。成功しない人は努力しない。その差だ」と。

また弟子が「ではどうして、努力する人としない人がいるのですか」との問いに禅師は、「努力する人間には志があり、しない人間には志がない。その差だ」と。

また弟子が「人間にはどうして志がある人とない人が生じるのですか」との問いに禅師は「志のある人は、人間は必ず死ぬということを知っている。志のない人は人間が死ぬということを本当の意味で知らない。その差だ」と。

 我々は今、四泊六日でハワイに来ています。

到着したホテルのロビーで、今日からあなたはどのように四日間過ごしますか、との質問にそれぞれ、私はショッピングをしてプールで泳いで、私は、ゴルフをして美味しい食事をしてと計画をたてます。

私は部屋でテレビを見てゴロゴロして過ごしますという人はいません。

なぜなら、我々は五日目には日本に帰らなければならないことを知っているからです。

そのためには、一時間でも一分でも充実した時間を過ごしたいという志と努力が働きだすのです。

 道元禅師は、「我々に与えられた時間は限られている」ということを意識できるかどうかが人生の成否につながると言うのです。

人生を充実させるのです。

 レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉に「充実した一日が幸福な眠りをもたらすように、充実した一生は幸福な死をもたらす」とあります。

死を意識するからこそ、一日が一生が充実するのです。

 人生の五計で言えば、まず「死計」を計って、後の「生計」、「身計」、「家計」、「老計」を計りなさいと言うことです。

 お寺に行くと、「いつも無常とか死とかの暗い話で嫌いだ。だからお墓参りはお寺参りは歳を取ってから行けばいいんだ」という風潮がありますが、歳を取ってからでは遅いのです。

若いうちから学ばなければいざというときに役に立たないのです。

 自然災害の地震や津波でも、もし発生したら高い場所に逃げなさいという教えが必要ですし、教えだけではいざという時に役に立ちません。

具体的に何処に逃げるのかを何回も練習しなければ、いざという時に役に立たないのです。

 その練習が、寺で行う施餓鬼や彼岸会などの法要です。

人間は生まれたら老いて病気をして死んでいく存在であることを学ぶことが、人間を正しく豊かに幸せにしていくことなのです。

「若いうちから墓参り」をお勧めします。

                                 合掌



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